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男性視点の少女小説

セイ@様の「果てしなき空の向こうへ」(http://soranomukoue.blog50.fc2.com/)を、リンクに加えさせて頂きました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

このところ仕事のために、集英社コバルト文庫を大量に読み続けております。
ネット上などでは「ライトノベル」という扱いをされることが多いのですが、
文体や小説の作り方などを見ていると、特に90年代半ばくらいまでは完全に別物ですね。

たしかに、表紙に漫画的なイラストがあり、文庫本の版型で出ている点はラノベに見えるのかもしれませんし、
ここ数年の新しいものは、ラノベ化がかなり顕著に見られるように思います。

ただ、少女小説は明治期から、吉屋信子や尾崎翠を経て、昭和・平成に至る流れがあるわけで、
これは言ってみれば、男性の書き手が少女達に物語を供給してきた状況から、
女性達がみずからの物語を獲得していった歴史です。
その歴史性を無視して、安易にライトノベルとしてしまうのはどうかな…と。
ライトノベルは基本的に少年小説の系譜なので、やはりその辺りは区別して考えたほうがいいようにも思います。
(…こういうネタはブログではなく、論文で書かないといけませんね)

さて、そのなかで少し気になったのが、樹川さとみ『グランドマスター』(コバルト文庫、2007)です。


この小説は、「あとがき」で著者の樹川さとみさん自身が指摘しておられるように、
徹底して男性キャラクターからの視点で書かれており、ヒロインであるシアシーカ(シーカ)からの
視点で書かれた部分がありません。
この点は、ずっと少女小説を読み続けてきたなかで、かなり驚きました。

少女小説では伝統的に、主人公を少女に設定し、その視点から小説を書くのが基本となっています。
(ラノベの主人公が基本的に少年で、その視点から書かれているのと同じですね。
最近では、女性視点のラノベもそろそろ出てきていますが…まだ少し難しいかもしれません)
もちろんここには、対象読者として設定されている少女たちと同じ年代の主人公を作り、
その視点から物語を語り出すことで、読者の共感を呼ぼうという意識が見え隠れしています。

問題は、なぜ男性視点の書き方が可能になったのか、でしょうか。
なぜなら、少女小説で男性視点の物語を書くということは、おそらく、
このように「共感」を誘おうとする小説の書き方を、いったん拒否する必要があると思うからです。
実は私は、読者が作中人物に「共感」して小説を読むという発想は、少なからず疑っているのですが、
多くの編集者や作家の中では、小説には読者の「共感」が必要だという考えが根強く残っているように思います。
ですから、「共感」を得るという書き方を拒否した時点で、本にする企画が通らない可能性が高いのです。

もちろん、少女小説から外に出れば男性視点の小説など数限りなくあります。
ただ、男性視点で書かれた少女小説は、書き方としてかなりBLに近いものがあるでしょうか。
考えてみれば、BLが同人誌や書店の隅に置かれていた状況から離脱し、
より多くの読者を獲得するようになった時期と、
このように男性視点の少女小説が書かれるようになった時期とが、
少なからず重なっているような気もします。
ですから、少女小説のBL化という問題は、ある程度考えてみてもいいかもしれませんね。

ただこの場合、女性読者がどういう観点でBLを読んでいるかが問題になるので、男の私ができるかどうか…
女性読者がBLの登場人物に「共感」しながら読んでいたら、これまで書いた問題意識が崩れてしまうんですよね。
まさか、ないだろうとは思うのですが…。
実は、身の回りに腐女子の方が少ないのですが、誰かに聞くしかないかなあ…。
プロフィール

大橋崇行

Author:大橋崇行
文学、ライトノベルなどなどについて、徒然にかいています。
プロフィールの詳細やコンタクトにつきましては、個人HP(→「泉月亭」)をご覧下さい。

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