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渡辺望『国家論 石原慎太郎と江藤淳。「敗戦」がもたらしたもの』

大学時代に所属していたサークルの先輩にあたる渡辺望さんから、御著書を頂きました。
国家論 石原慎太郎と江藤淳。「敗戦」がもたらしたもの』です。
せっかくなので、書評など。

例によって長い上、失礼があってもいけないので文体を変えております。
しかも、今回のような内容を私は酒の席などでもめったに口にしないので、
驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。

ですから、もし興味がおありの方がいらっしゃいましたら、下の続きよりお付き合いください。
【書評】渡辺望『国家論 石原慎太郎と江藤淳。「敗戦」がもたらしたもの』

〈保守〉という立場から近代以降の文学を語ることは難しい。

 特に戦後派文学は、第三の新人や内向の世代を中心に〈保守〉的な傾向をもった作家も出てきたが、多くの作家は〈保守〉系の思想から距離を置いてきた。それらの作家を〈保守〉の枠組みで語ろうとすると、どうしても作品・作家とそれを語ろうとする言説とが、水掛け論のような様相を呈してしまう。

 一方で近代以降の文学についての研究や評論は、雑誌『近代文学』の周辺にいた平野謙や小田切秀雄、佐々木基一、本多秋五らによるものが、まずは戦後の基本的な枠組みとなった。また、マルクス主義批評にはじまり、構造主義、ポスト構造主義、カルチュラルスタディーズ、ポストコロニアル批評といった戦後における文学とその周縁にある〈知〉をめぐる枠組みは、いわゆるナショナリズムの思考から距離をとり、それを相対化していくという方向性を機軸としている。これは日本に限ったことではなく、第二次世界大戦以降の特にアカデミズム周辺にある〈知〉が、いわゆる〈保守〉とは相反する思考によって言説を編成してきているのである。

 イデオロギーを相対化しようというポストモダン以降の言説の枠組み自体が、ある種のイデオロギー的な規制力を持ちかねないという陥穽を含んでいる可能性については、文学を論じる側にいる一人として、自戒を込めつつ留意をする必要がある。しかしそれでも、ナショナリズムという「-ism」の発想を色濃く残した〈保守〉系の評論家がその枠組みのなかで現代の文学を語るということは、ある種の時代錯誤的な印象を読み手に与えかねない。したがって、それでもあえて〈保守〉の立場から文学を論じるということは、相当な覚悟と、文学の周辺にある〈知〉を相対化しうるだけの視点や、枠組み、思考のあり方を示すことが必要となる。

 そのような視点で、渡辺望『国家論 石原慎太郎と江藤淳。「敗戦」がもたらしたもの』を読んだ。なぜなら私の先輩筋に当たる著者は、西尾幹二に私淑し雑誌『正論』に寄稿する評論家であり、〈保守〉の論客だからである。

 〈保守〉の立場から文学と政治とを論じるに当たって著者が提示したのは、石原慎太郎の「父性」と江藤淳の「母性」という視座である。特に興味深く読んだのは、石原慎太郎についての言及である。

 著者は弟の裕次郎について記した作品『弟』に注目し、慎太郎と裕次郎の兄弟が父親によって海に連れていかれたという石原の記憶を論じる。すなわち、『太陽の季節』などに典型的にみられるようなファロセントリズムを石原の政治思想につなげ、石原の文学と政治をめぐる思想の根幹に「父なるもの」を求めようとする意識があるという。逆に、現在の「国家」は「父性」を持たないがために石原にとっては嫌悪の対象となり、それが一般的な〈保守〉と石原との断絶を作り出している。その意味で本書の石原論は、〈保守〉からもしばしば批判の対象となってしまう石原のナショナリズムがどういう思考に根ざしているのかを明らかにし、その上で、〈保守〉の立場として石原を再評価しようとする試みだと言えるだろう。

 こういった石原の微妙な立ち位置は、〈保守〉とは異なる〈知〉の枠組みからでは、なかなか見えてはこない。その意味で本書の石原論は、傾聴するべきものである。

 一方で、小説に書かれていることと作家自身の思考を重ねあわせようという思考のあり方や、本書で使われている「父性」「母性」といった用語をめぐるジェンダーの枠組みがまさしく〈保守〉的であるという点については、どうしても違和感が拭えなかった。少なくとも現代の〈知〉の枠組みを踏まえるなら、こういった「母性」や「父性」という思考のあり方そのものをもう一度検証する必要があるようにも思う。あるいは、このような思考を持ってしまうこと自体、私自身が現代の〈知〉という陥穽に捉われているということであろうか。

…うーん、実は思想系の文章をほとんど書いていないことを露呈していますね(苦笑)
それでは、長文失礼致しました。
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まとめ【渡辺望『国家論 石原】

大学時代に所属していたサークルの先輩にあたる渡辺望さんから、御著書を頂きました。『国家論 石原慎太

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